「鎮守の森」と「山棲の森」
すまいる愛知住宅賞のブログで触れた「54」番こと「鎮守の森」と「山棲の森」をご紹介したいと思います。

「鎮守の森」を東南側に借景できる角地に、夫婦+子どもの為の住宅を計画しました。
森を「外」、住宅を「内」という2項対立的な捉え方はせず、「外かつ内」という捉え方で新しい関係性を生み出そうと住宅自身も「山」に見立て、「自然の山の中に棲む」イメージをコンセプトとしました。
外部空間は森と一体的な建物とするため棚田状にすることで圧迫感を軽減。
更に屋上に植栽計画をし「山」のイメージに近づけました。
また内部空間においても様々な床レベルを設定し、室内緑化することで奥行感と広がりを持たせ、変化に富んだ空間としました。

南東側から望む
「環境に配慮した住宅を」という要望から、2階と3階は一部、屋上緑化している

東側から望む
手前のクスノキは20mほど

北東側から「森の泉」と「アプローチ」を望む
左の凹み:「森の泉」
右の凹み:「アプローチ」
路盤は綺麗な石張りとはせず、砕石を敷き詰めた
目地はセメントではなく敢えて「砂」

北側から「鎮守の森」を望む
植栽にてアプローチを柔らかく目隠し
植栽:ハイノキ + ハクサンボク

「森の泉」は雨水利用によるもの
採石場での端材を利用した水たまり
植栽:サワフタギ+タマシダ+ハイノキ
雨の日はコンコンと湧き出る湧水のように波紋を広げる

玄関
床材は「ボルドーパインちょうな掛け」
凸凹が足の裏を刺激し、気持ち良いです

左手階段:ダイニングへ
右手廊下:和室へ

階段を上り、ダイニングへ

近景の緑と遠景の緑を楽しむダイニング
左側のガラス外の外壁は、交通量の多い三叉路からプライバシーを守っている
「森の泉」に植えたカツラが顔を出している
今後の成長が楽しみ
鉢植えはハイノキ

来客の多い施主は飲食が共にできるダイニングをパブリックスペースと捉えた
リビングは半階下に繋げ、別空間とした
ダイニング南側はテラス

アイレベルで「DK」と「フリースペース」を望む
木造3階建の空間の中に7つの床レベルを設定し、各室を緩やかに繋げた
木々が作り出す日向や木陰の場所が刻々と変化する中で、住み手が心地よい居場所を求めて移動する様は、まるで「山」の中を散策するかのよう

「フリースペース」から「鎮守の森」を望む
フリースペース右手は、施主の趣味であるダンス練習用のミラー壁
このミラー効果で、更に他の空間とも繋がる面白さがある

「浴室」から「鎮守の森」を望む
鎮守の森の「サクラ」「クスノキ」「ケヤキ」「イチョウ」などの大木は、四季を通して楽しめる森
屋上緑化には「アベリアエドワードゴーチャ」「ビンカミノール」「ムベ」を植栽

子ども部屋はフリースペースの吹抜けに隣接する

「子ども部屋」から「鎮守の森」を望む
屋上も一部、屋上緑化(ビンカミノール+ブルーベリー+ムベなど)


吹抜け部分は室内緑化
(パキラ+クッカバラ+ポトス+モンステラなど)

「リビング」から「鎮守の森」を望む
道路境界から奥まったプライベートスペースとしてのリビング
落ち着くように、しっとりほの暗い空間とした

「リビング」は「DK」から半階下った関係
さらに900下がり「主寝室+書斎」「縁側」へと繋がる

「縁側」から「鎮守の森」を望む
左奥:和室へ
右奥:リビング越しに、主寝室+書斎+WCLへ
濡れ縁でBBQ、花火、スイカを楽しみます

和室6帖
来客の宿泊スペースとして利用
内障子と陰影が美しい(雪見障子)

フルオープンになり「鎮守の森」を望む
ちなみに「網戸」「雨戸」も戸袋に完備

「南の庭」を望む
右手の戸袋は「手漉き和紙貼」
天井材はサツマヨシベニヤ

「南の庭」を望む
将来的にはL方の生垣(プリペット)が育つと、プライバシーを守られた「南の庭」となる

敷居に腰掛けたアングルから「南の庭」を望む

和室の床レベルは地面より低く設定し、外部との一体感を試みた
正面にハナノキ+コバノミツバツツジ+キチジョウソウ+タマシダ

正面入口の横、障子を開けると「森の泉」を眺められる

床板:カシュー塗装
床柱:錆丸太
押入:手漉き和紙貼
押入上ルーバーにエアコン

階段右手のガラスから「森の泉」望む

こんな感じ

縁側の右手には宿泊者用の洗面とトイレが完備
正面奥が玄関

南東側から望む
両サイドにハナノキを植栽
正面2階の屋上緑化が見える

雑木風の植栽計画が山道を思わせる
左手前の植栽はツリバナ
盛り土部分はシロバナサギゴケで被地

「鎮守の森」と「山棲の森」の一体感

正面は和室と縁側+濡れ縁

完結した部屋ではなく関係しあう居場所は、新緑や紅葉の森、光や風の変化とともに家族の関係性も豊かにしてくれることでしょう。
20年後、庭の木々が森のようになる日
ようやく「山棲の森」が完成します
設計監理:西口賢 建築設計事務所
構造設計:(有)ワークショップ犬山分室 安江一平
施 工:大誠工務店 岡田祐平
電 気:瀬筒電気工事 瀬筒直治
外 構:櫻井造景舎 櫻井靖敏
所在地 :愛知県岡崎市
用 途:専用住宅
主体構造:木造在来工法 3階建
敷地面積:192.29m2
延床面積:186.50m2
写真撮影:西口 賢